CLAVIS SIDE 4
慣れてしまえばどうということはない。私は仲間内から『主婦殺しのクラ』、ちなみにランディは『女学生の友・ランディ』と呼ばれて、店の売り上げに貢献した。
本当に殺したわけではない。下界の者の一種独特の言い回しらしい。なんだかわからぬが「ウチのダンナと違ってスラッとして無口でス・テ・キ」なのだそうだ、私は、フッ。
ランディは注文を取る度に、にかぱと笑うのが爽やかでいいのだそうで、これは私もそう思う。
そうしてなんとか下界に降り立って一ヶ月がたった……。
ハンバーガー屋の店長は悲しそうな顔をして私たちに給金を手渡した。
本当は郵便振替とかいうものらしいのだが我々は口座など持たぬので。
「帰りの汽車の中で食べてくれ、国に帰っても元気でな」
と店長は袋に入ったハンバーガーをくれた。私とランディは親が危篤になったので急遽、国に帰る……ということにしてあるらしい。ランディが考えそうなクサイ筋書きだったが、いたしかたあるまい。
「短い間だったけど、ありがとな、ランディ、クラヴィス」
「ありがとう店長。俺、これで胸を張って聖……いや国に帰れます」
「クラヴィスもあんまりランディに世話をかけるんじゃないぞ」
店長は私を励ますつもりか、私の肩にポンと手を置いて言った。
「わかった。心がけよう……」
私は素直に言ってやったつもりだが、店長は「いつも偉そうだな、コイツ」と呟いた。
私はこの店長よりも随分、背が高い。自然と真上から見下げるようになってしまうのだが、何やらいつも頭を気にしていて、おかしいなと思っていたので、肩を叩かれたお返しにさり気なく頭に触れてやった……フフ、やっぱりな。カツラか。
「す、すみません……、悪気はないんですよぉっ、あ、いや、謝ってスミマセン、クラヴィス様」
ランディは店長に謝りながら、同時に私にも小声で謝った。忙しいヤツだ。
「ははは、お前、いつまでたっても女房のシリに敷かれてんのな〜」
ちょっと私を見てムッとしたものの、すぐにランディの方を見て店長は明るく言った。
(フン、さっきコソコソと御礼と称してランディが何か渡していただろう。
あの中味がいかがわしいビデオだと知っているぞ。だが期待してもダメだ、
そのビデオは『看護婦サンシリーズ』の中でも駄作だ。内科医と看護婦の絡みなどありがちではないか)
「だからっ、違いますよっ、俺とクラヴィス様はですねえっ、単にえっと……以前の職場が一緒だっただけでですねっ」
ランディの必死の声に私は我に帰った。
「ああそうだったのか……それで職場を追われてこんな田舎町のハンバーガー屋に……」
「うう……違うっていうのに〜〜なんとか言ってくださいよ、クラヴィスさま〜」
「フッ……」
ランディが赤くなって焦る様が面白かったので私は、否定しなかった。
一方その頃ランディは……★ZAPPING RANDY SIDE