リュミエールとオスカーは十数人の手下を前にたじろぐ事なく立ちはだかっている。「南無水龍召還! リヴァイアサン〜」
リュミエールの水のサクリアがもたらす召還技がルマクトーの手下たちに炸裂する。迫り来る大津波が銀青色の鱗を持つ水龍の姿に変わる。
「う、うわぁぁぁ〜」
前列にいた手下の何人かが叫んだ。だがしかし……。
「ひるむな、あれは幻影だ、前進しろ!」
数人の手下のうちにあって指揮官と思しき者がそう叫んだ。リュミエールの技は人の心に作用する幻影でしかない、たとえ理屈でそう判っていても、やはり身を以て【リヴァイアサン】を受けると、迫り来る水の恐怖に抗う事が出来ないのが普通である。手下のうち何人かはやはり、その場に倒れ込み気絶してしまったが、尚十人ほどがそのまま怯む事なく立っている。
「わたくしのリヴァイアサンが効かないとは……」
「いでよ! 火龍! サラマンダーッ」
オスカーはリュミエールの前に出ると【サラマンダー】を放つ。リュミエールと同様に炎のサクリアの召還技である。幻影とは言えど、それが心に作用する効果は大きく、本当に炎の熱さまでも感じ、感受性の強いものは火傷を負う事もある程。しかし【サラマンダー】も【リヴァイアサン】同様、ここでは僅かに数人を倒しただけに過ぎなかった。
「オスカー、わたくしたちの技はもう見切られているようですね」
「ああ、ルマクトーのヤツ、相当、俺達の事を研究したとみえるな」
オスカーとリュミエールはジリジリと後退しながら身構えた。
「だがな……召還技だけだと思うと大間違いだぞ」
オスカーは鞘から剣を抜くと、リュミエールを庇うように手下たちの前に立ちはだかった。
「オスカー、気遣いは無用ですよ」
リュミエールはそう言うと、スッとオスカーの横に出た。
「行くぜ! リュミエール」
オスカーは剣をかざして手下たちの間に切り込んで行った。手下たちは各々、銃を手にしているがオスカーの気迫がトリガーを弾かせない。相手の懐に飛び込んでしまえば距離が近すぎて尚更、銃が撃ちにくくなる。リュミエールは何も武器を持たない。がそれだけに身軽に敵に近づくと、素早い動きで手下の首筋に手刀やパンチを食らわす。確実に一人づつ手下を倒したリュミエールとオスカーはジュリアスたちの後を追った。
★ next ★
★ 表 紙 ★