パタン……とドアが閉まると、先ほどとは嘘のような静寂と緊張感が守護聖たちに走った。

「………………」

 ジュリアスは無言で他の守護聖たちを睨み付けている。ジュリアスの怒りのオーラが見えるならば、天まで届くほどのものだろう。

「す、すみません……つい」

 オスカーは頭を掻きながら詫びた。

「俺も……あの、なんだか主星バラエティアワー見てるみたいで……」

「お、ランディ、おめーもあの番組見てるのかよ〜、面白いよなー、日の曜日の十二時からは見逃せねーよな」

「ゼフェル! あ〜すみませんね、ジュリアス。元はと言えば、私が捕まってしまったせいで……」

「もうよい、何だか判らぬが、もうあの男の訛りに惑わされてはならぬぞ」

 ジュリアスは溜息をついた。

「そっかぁ、ジュリアスはあんなお笑い番組なんか見た事ないから、トムサの方言がただの訛りに聞こえるんだねー」

 オリヴィエはウンウンと一人で納得している。

「とにかく一階まで辿り着く事だな……早くせねば」

 とクラヴィスはボソッとそう言うと、ゴソゴソと守護聖の衣装を脱ぎだした。

「何をなさっているのですか? クラヴィス様?」

 リュミエールはクラヴィスの脱いだ衣装を無意識に受け取りながら尋ねた。

「こんな守護聖の衣装のままでは走れまい……下にサクリア仮面の衣装を着けてきたのだ」

 クラヴィスはそう言うと袖のあたりから直径五センチほどの紫色の球体を取り出した。 サクリア仮面の衣装の一部であるマントを圧縮してあるカプセルである。クラヴィスがそれを壁に投げつけると、ポンッと音がしてカプセルが破裂し、中から、黒いマントがバサッと飛び出した。

「ゼフェル……これは大変よいアイディアだと思うが、皺になるな」

 クラヴィスは渋々マントを身につけつつ言った。

「さすがクラヴィス様……わたくしも下に着ていれば良かったです……」

 リュミエールはクラヴィスの守護聖の衣装をキッチリたたみながら言った。

「オスカー、肩飾りを外してくれ……」

 ジュリアスはそう言い、同じように守護聖の衣装を脱いだ。

「アンタたちってダテに筆頭守護聖じゃないよね〜、ちゃあんと用意してたんだねぇ。ちょっとオスカーお退き。サクリア仮面ゴールドの髪はワタシが結ってあげることにしてるんだからね」

 オリヴィエはオスカーを退け、ジュリアスの長い髪の毛をひとつに束ねた。

「額飾りはとらなくてもよい」

 ジュリアスはラピスのついた重い額飾りを外そうとしたオリヴィエの手を制した。

「外さないと危ないよ〜」

「よいのだっ、よいと言うのに〜」

 ジュリアスは額飾りを外させまいと押さえている。リュミエールはオリヴィエの側につつつと寄ると耳元でコソッと呟いた。

「痕がついてるんですよ、額飾りの」

「あ、そーか、ぷぷぷ、じゃクラヴィスなんか、もっとさ〜。くくく」

 オリヴィエは忍び笑いをしつつ、ジュリアスとクラヴィスを見た。

「コホン……」

 とジュリアスは咳払いして、キッチリと額飾りをつけ直した。

「別に俺たちはこのままでもあまり変わらないな」

 ランディは自分の衣装を確かめながら言う。

「むしろヤングサクリアーズの衣装よか、普段の方がカッコイイしな〜」

 ゼフェルは黒皮の守護聖の衣装に満足しつつ何気なしに言った。

「やっぱり……あの衣装はダサイと思ってたんだな……ゼフェル……」

 ランディの顔が曇る。

「あ……いや〜。そのよ〜なんつっーか」

「まぁまぁ、揉めないの、二人とも。ジュリアスとクラヴィスの着替えも済んだ事だし、問題はどうやって一階まで行くかだね」

 オリヴィエはランディとゼフェルの間に割り込み、真顔でそう言った。

 


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