「あ〜トトカルチョはたった今で締め切りや。この時点で、えーと、三枠の緑の守護聖は俺が捕獲したさかい、コイツに賭けたヤツは負けやで〜」

「と、トトカルチョ……何なのだ一体っ」

 訳が判らずジュリアスは叫ぶ。

「アンタらのうち、誰が生きて一階まで辿り着くか、全組員で賭けてるんや。ホレこれは一時間前までのオッズやけどな」

 トムサは机の上から一枚の紙を取り出し、放り投げた。ヒラヒラとそれは舞い、オスカーの足下に落ちた。それを拾い上げたオスカーは少し満足気に頷く。

「む……俺が一番本命か……」

「あ、わたくし単穴なんですね」

 ちょっと嬉しそうにリュミエールはその賭け表を覗き込んで言った。

「そなたたちっ!」

 ジュリアスの叱咤が飛ぶ。

「ジュリアス様、ご安心下さい。ジュリアス様は対抗ですよ。複勝式では俺と絡んで一番人気です、ふ、当然だがな」

 オスカーは嬉しそうである。

「あ〜ゼフェル、私たちの【9─7】って一番人気ないみたいですねぇ」

「どれどれ、ワタシにも見せて〜、あれ、ワタシってばランディよかオッズ下なワケ〜」

「ははは、オスカー、逃げ馬だってよ、ほれ、ジュリアスが先行馬だってよ〜」

「キャハハハハ〜、するどい〜」

「どういう意味なんだ?」

 ランディがキョトンとして尋ねた。

「おめー、競馬知らねーの? 先行馬ってのは、逃げ馬の後にピッタリとくっついて、ここぞって時に出てきてキッチリ、トップを狙う馬の事だよ〜」

「なるほど」

「そなたたちいいかげにせよっ、一体どうしたのだっ、守護聖としての誇りと任務を忘れたかっ、それにこれはサクリア仮面としての正義を、貫き通さねばならぬ事件であるのだぞっ」

 ジュリアスはトムサのペースに巻き込まれて、騒いでいる他の守護聖を嘆き言った。が、オッズ比べに夢中で誰も聞いてはいない。ジュリアスはふと、クラヴィスを見た。クラヴィスだけは腕組みをして、目を瞑り黙っている。

「おお、クラヴィス。そなたはやはり守護聖在籍が長いだけあって、やる時はやってくれると思っていたぞ、他のものがこんな状態の今、私たちだけでもシッカリせねば、な」

 ジュリアスは少し嬉しそうにクラヴィスに言った。

「ぐー」

「ね、寝るなーっ」

 ジュリアスの怒りは絶頂に達している。

「なんや守護聖いうても大した事あらへんやないか、兄ちゃんもなんでこんなヤツらにむざむざとやられたんや。まぁええわ、俺が敵とったるんやから。ほな、一階で逢えたら逢おか。言い忘れてたけど、各階には爆弾が仕掛けてあって、時間ごとに上の階から爆発していく事になってるねん。モタモタしてたら部屋ごと吹っ飛ぶで」

 トムサは楽しそうに言う。

「何っ! 自分のアジトを爆破していいのか?」

 オスカーが問い掛けるとトムサは嬉しそうに言った。

「こんな古臭い城塞はブッ飛ばして、新社屋建てるんや。どうせ解体するんやったら有効利用しようと思てな、アンタらをご招待したんや、ま、頑張ってや」

 そう言うとトムサは気絶しているマルセルを抱えたまま、二、三歩後ずさると部下に囲まれたままドアの向こうに消えた。

 


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