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私は、王立研究院からの連絡を確かめて、執務官に、週明けの予定について二、三の指示を与え、立ち上がった。私が扉を開けたと同時に、向かい側にあるクラヴィスの室の扉が開 き、中から物憂げに出て来たあれと目が合った。 「帰るのか?」 「ああ。お前が定めた執務時間とやらは、十分も前に過ぎたからな」 「少し風が出てきたな……今宵は冷えそうだ。明日は雨かも知れぬな」 私は、彼方の鈍い色の雲を見て言った。それは夜の帳と絡み合い、聖地中を陰鬱な空気で満たそうとしているように思えた。 「フ……つまらぬ週末になりそうだな、お前にとっては」 明日、オスカーと遠乗りの約束がある事を知っているかのように、クラヴィスが言った。 “だから何だというのだ……” 私は、クラヴィスの一言に、何故か小さな怒りを覚えつつも、あえて反論する気力もなく押し黙った。 それきり、私とクラヴィスはお互い無言で、執務室棟の前から中庭を抜けて、さらに宮殿の外に続く門の近くまで来た。 僅か五分ほどの間に、ほとんど日は沈んでしまい、辺りはかなり暗くなってしまっていた。晩秋のもの悲しさが、私たちを包み込む。 私たちの館は正反対の方向にある。宮殿を出たら、そこで別れなければならぬ……。 もう幾度、このように背中を向け合っただろう。また、そなたは俯きながら、暗い道を、闇の館に向かい帰ってゆくのだろう。 私は、気まずいこの雰囲気をうち破ろうと、意を決してクラヴィスに言った。 「クラヴィス……待て」
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