「ジュリアス、無事かっ」
クラヴィスが、扉を開け叫ぶと、手の先だけを、壺に突っ込んで座り込んでいるジュリアスが項垂れていた頭を上げた。「ようやく……治った……もう……」
ジュリアスの唇の色は土色である。クラヴィスはジュリアスに肩を貸し立ち上がらせたが、激しい眩暈が彼を襲う。それでもなんとか気力だけでジュリアスは歩く。「館まで戻るのは無理だ、執務室で休むがよい」
クラヴィスは隣接する執務室棟の自分の部屋までジュリアスを運んだ。一番奥にあるジュリアスの執務室まですら、もう歩けないのだ。「すまぬ」
ジュリアスは消え入りそうな声で、クラヴィスの執務室の奥にある私室のベッドに身を横たえた。
「どれくらいサクリアを出したのだ?」
「わからぬ……途中から意識を失っていたようだ」
ジュリアスの声はかすれている。クラヴィスが、水を勧めるが体を起こす事が出来ず、ジュリアスは呻き声を上げて、またベッドに沈み込んでしまう。「仕方ない……」
とクラヴィスはその水を自分の口に含むと、ジュリアスの乾いた唇にあてがい、少しづつ水を流し込んだ。