///警告/// この物語は、当サイトで1000番をおとりになりました、少佐さんちのひな様のリクエストにお応えしてお送りします。内容のほとんどが内輪受けであり、一部の表現にパクリ及び、過激な部分が見られますことをご了承ください。尚、登場人物その他につきましては、フィクションです。はりせんチョップはご容赦願えますよう、ごく一部の御方に申し上げます。 |
『世界の中心でアホ〜と叫んだ女』
〜KIBAAN K-411の報告書より〜
私は【KIBAAN K-411】通称シルバと呼ばれている。 |
崩壊した旧宇宙の虚無空間……そこに今、真空が生まれた。素粒子、陽子、中性子……すべては湧き起こる。虚無の空間はもうそこには存在しない。さあ、星を創らねばならない……。 宇宙の女王は、この虚無空間に生まれた新しい宇宙を満たすべく、二人の少女を召還した。一人は、イッターリア系の貴族出身の少女、アカツキ・サンタルチーア、そしてもう一人は、チャチャイニーズ系の謎の少女、シイ・チャンである。 そして二人の宇宙育成が始まったのである……。 「緑なす大地、紺碧の海。果実はたわわに実り、畑は黄金色に輝く。実り溢れる世界……素晴らしい」 アカツキ・サンタルチーアの育成した惑星・テンガチャヤの様子を見ていた光の守護聖は感嘆の声をあげた。 「おお、こちらの星では今、葡萄の収穫祭が行われているようだ。娘たちが歌いながら葡萄を踏む様ものどかなことだな」 これもまたアカツキ・サンタルチーアの育成した惑星・ニシナカジマミナミカタの様子である。たが、その感嘆の声をあげた光の守護聖の顔が次第に曇っていく。 「どの星も皆、やけに作物が豊富のようだな」 「はっ。どの星でも、やたら美味いモノが……」 炎の守護聖が首を傾げる。 「育成した星が全部、同パターンだンねぇ……豊かな大地っていうのは確かに惑星育成の最高パターンではあるのだけど……美味いモンとか美味いモンとか美味いモンばっかってのは……」 夢の守護聖は感心しないというように首を竦めた。 「それでは、シイ・チャンの育成している惑星を見てみましょうかねー」 地の守護聖はモニターを切り替えた。シイ・チャン育成するところの惑星・エピソード1が映った。 「素晴らしく科学技術が発達していますね。短期間にここまで発達するなんて……」 緑の守護聖が感心する。 「街はドロイドと清浄システムによって常に美しく保たれていますね」 次に映し出された惑星・エピソード3を見て水の守護聖は言った。 「けどよ……建物の外壁が基板そのまんまって、一体どーゆー趣味なんだよ」 鋼の守護聖は吹き出しそうになりつつ惑星エピソード4を見て言った。 「シイ・チャンの育成する星は、どれもこれもシルバーメタリックな世界のようだな……」 闇の守護聖が大きく溜息をついた。 「極端すぎるよな……」 風の守護聖が呟くと、その場にいた全員が深く頷いた。 そう……新宇宙の女王は人選を間違えたのである。 しかし、今更取り返しがつくものではない。 「こうなったらアレを使ってみてはどうでしょう?」 と言いだしたのは王立研究院のエリート主任である。 「アレとは?」 「融合システムです……」 エリート主任のメガネの縁がキラリと光った。 「なんだい、それ?」 風の守護聖は尋ねた。 「つまり、この極端な育成をしている二人の思考を融合させて、バランスのとれた育成能力にしようというシステムです」 「それは、個々の個性を無視することになるのではないか?」 眉をひそめた光の守護聖であった。 「しかし、このままでは、旧宇宙には、二パターンの星しか誕生できませんよ……。美味いモノばっかりの星か、シルバーめいたSFチックなモノばっかりの星か……」 「もっと問題なことがあります……」 とおずおずと言いだした水の守護聖は、モニターを惑星都市内部の人々の様子に切り替えた。 「ご覧下さい。アカツキ・サンタルチーアの育成する惑星の男性は、皆、金髪碧眼の美形ばかり……」 「あっ、ホントだ。シイ・チャンの方は……わ、黒ロンゲの長身美形ばっかし……」 夢の守護聖はあきれたように言った。 「このままでは、遅かれ早かれこれらの惑星の生命体は種として維持できません」 エリート主任はそういうと、光の守護聖に決断を迫った。 「いたしかたあるまい……」 そして、アカツキ・サンタルチーアとシイ・チャンは、重なって寝かされ(ちなみにシイ・チャンが上であった)思考融合装置【ゴッチャニナール】は作動された。 「パルス送信します」 「第一接続クリア」 「ハーモニクス正常」 「第二接続開始」 「アカツキ・サンタルチーア、シイ・チャン、シンクロ率上昇」 「40、55、69……まであがりました。思考超合成エリアまで後30」 「ハッ……警告シグナル発生! 二人の中枢神経に拒絶反応がッ」 「融合停止!……だめです、間に合いませんッ」 「警告!警告!警告……二人の体内に高エネルギー反応……あああああーー」 「アカツキ・サンタルチーアが沈黙しました。シイ・チャン暴走……く、喰ってます……」 「シイ・チャンがアカツキ・サンタルチーアを取り込んでいる……げぼっ」 ……かくして……。 イッターリア系の貴族出身の少女、アカツキ・サンタルチーアの存在はなかったことになった。いや、それどころか…………。思い余った守護聖たちは、虚無空間に生まれた新宇宙そのものを封印してしまったのだ。シイ・チャンをそこに閉じこめたまま……。暴走を繰り返したシイ・チャンはアカツキ・サンタルチーアの育成した惑星の食べ物、主に青しそをまぶしたイクラ入り鉄火丼中心に食い尽くし、全ての星で、勝手きままに思う存分暴走したおした後、豆腐の角に蹴躓いて転び、あっけなくその19歳の人生を閉じたという。 しかし、おさまりがつかないのは、シイ・チャンに取り込まれたアカツキ・サンタルチーアの霊魂の方である。成仏しきれなかった彼女の魂魄は、封印された宇宙に留まり、「むっちゃ、腹立つしーー」と思いながら漂い続けたのである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 正式記録はここで終わっている。私【KIBAAN K-411】の推考するところによると、この不幸な物語が、あのナドラーガの出典ではないかと思われるのである。些か、確証のない事ではあるが、一応、記載しておこう…………。
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