「どいつもこいつもしけた面してやがるぜ」ゼフェルは最初から喧嘩腰である。

「誰なんだよアンタら、揃いの服なんか着ちゃって、変なの」少年は見慣れぬヤングサクリアーズに言う。

「やっぱり変かな?」マルセルは自分の服をじっと見つめつつ呟いた。

「マジに受け取るなよっ、マルセルっ、それよりほら、自己紹介っ」ランディはマルセルを急き立てる。

「あ、そうだったね、じゃぁっ」マルセルはここぞとばかりに前にズイッと歩み出て言う。

「僕たちはヤングサクリアーズ、僕はサクリア仮面、緑のホップ」

「オレはよー、鋼のステップ」

「そして俺が風のジャーンプ」

「………………………………」

 少年たちの反応がない。

「かっこいい〜とかなんとか言えよ〜」ランディがそう言うと、絶望のチョコボだけが小声で

「かっこいい……かも」と呟いた。

「なんだか変なヤツ、なんだい話しって、僕たち何も悪い事なんかしてないぜ、なぁ」

 と一人の少年はわざとらしく絶望のチョコボの方に手を置く。

「俺たち友達だよな」と違う少年も言う。

「おい、チョコボ、違うって言ってやれよ」

「イジメられてるんだろ? 嫌な事は嫌ってハッキリ言えよ」

 ゼフェルがパッパをかけるが、チョコボは俯いてしまって顔をあげない。

「だいじょうぶ、嫌だって言うんだ、もうヤメロって言うんだ、そこから始めよう、逃げちゃだめだ」ランディはチョコボの手を取った。

「わかるかい、君に勇気をあげるよ、心を開いて受け止めて」ランディの手から勇気のサクリアがチョコボに伝わる。

「なんだい、男同士で手なんか握ってやんの〜そういうシュミだったのか〜」と少年たちははやし立てる。

「よせよ、もう言うなよ、いつまでも僕だってー」とランディのサクリアを体に取り込んだチョコボは思い切って言う。

「なまいきなんだよ」とひとりの少年がチョコボの肩を思いっきり押した。

 チョコボがシリモチをついたのは花壇の縁、赤いチューリップが一本へし折れる。

「あ、花がっ。ひどい、何するのっ」と折れた花を心配そうにかがみこんで見てマルセルは言う。

「なんでぇこんなもん」と少年たちは花を踏みつける。

「……ゆるさない……」マルセルはスックと立ち上がった。

「やばい、マルセル待てっ、怪我させたらダメだぞっ」とゼフェルは叫んだがマルセルは花を最初に踏みつけた少年の側までにじり寄ると、思いっきり平手を食らわせた。一番おとなしそうな少女のようなマルセルが手を出したので唖然とする少年たち。さらにマルセルは次の少年の側に立って言う。

「君も花を踏んだよねっ」そして思いっきりその少年の足を踏みつける。

「な、なんだよ、こいつぅ」と少年はマルセルの手を掴んだ。

「僕にはわかるよ、君たちの心の花壇は涸れているんだ、思い出してよ昔の事、君たちの心にも綺麗な花が咲いていたでしょう、誰が水をやるのを忘れたの?」

「何言ってるんだ、コイツ、頭おかしいんじゃないの」

「そうそう、おれたちの心の花はさ、勉強や規則という嵐にやられて散りました〜ってね」

「ははははは」

「周りの環境のせいにしてもダメだよ、嵐が来たら添え木をしたりビニールをかぶせたりすればいいでしょう、今からでも遅くないよっ、花は涸れても種はちゃんと土に眠ってる、目を覚ましてちゃんと育ててよ、君たちの花を」

「おい、ランディ、マルセルのヤツ止めなくていいのか?」

「なんか入りきってるよな、今止めると後が怖い……」ランディとゼフェルは傍観する。

「君たちにあげるよ、僕のサクリアを。優しい大地、豊かな実り、全てを潤す心の花、グリーン・モイスン・ブレスィング〜」

 マルセルは瞳を閉じて祈る。自分のサクリアが荒んだ少年たちの心に届くようにと。

 その横でランディとゼフェルはひそひそ話しを続ける。

「グリーンモイスンブレスィングってどういう意味?」

「緑潤す神の恵みって事かな?」

「直訳じゃんか、バカ」

「なんだよっ、おめーに言われたく……おいっ見ろよ」

 ゼフェルはマルセルのサクリアが効いてヘナヘナと座りこんだ少年たちを指さす。

「おお、効いてるみたいだな、すごいぞマルセル」

「ありがとランディ」マルセルは誇らしげに顔をあげる。

 


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