オスカーは相手と殴り合いながら、ふとジュリアスの声がしたような気がした。

「ちくしょう、幻覚かっ、ジュリアス様〜っ」とその声を打ち消すようにオスカーは相手の顔面を殴りつける。 

「もうそれ以上はやめぬか、そなたたち、憩いの場所でこのような乱闘、恥ずかしいとは思わな……」とジュリアスの口上が途切れた。

「どーしたの、ゴールド? あっ、オ、オスカーとリュミエールぅ!」

 ゴールドの後ろにいたパープルが前に回って驚く。

「ほぅ、これは……」シルバーも酔いつぶれて泣き笑いしているリュミエールに目を見張る。

「サクリア仮面か……ふん、本当のサクリアってのはどんなものだか見せてやろうか、お遊びじゃないんだぜ、サクリアってのはなぁ〜っ」とオスカーは口元の血をペッと吐き出すと、両手をあげて自分のサクリアを放とうする。

「ラヴラヴファイヤーッ」とオスカーが腹の底から声を上げると、店の女が「キャーッ、オスカーっ、かっこいい〜」と黄色い声を上げた。と同時にオスカーは酔いと乱闘が足に回ったらしく膝をガクリとついた。

「情けない……オスカー、私のこのサクリアを浴びて反省するがいい」

 ゴールドはホーリー・シャインニング・アタックを放つ。オスカーの体に光のサクリアが炸裂する。

「こ、これは、この感じ……何故、ジュリアス様のサクリアがサクリア仮面に……」オスカーは強烈な眩暈を感じ意識を失った。

「リュミエールお前も大人しく眠れ……ダークネス・ラリホー……」

「ああ、クラヴィス様、クラヴィスさ……ま……?」

 倒れているオスカーとリュミエールを引きずるようにジュリアスとクラヴィスは店を出る。

「はいはい、サクリア仮面の活躍は今夜はここまで〜、後は楽しくやって頂戴、そーれ、ドリーミング・ビューティ・メ・ダ・パ・ニ〜」

 オリヴィエは残された店の女と野次馬に夢のサクリアをふりかける。

「わーっ、サクリア仮面さん、ばんざーい」

 パチパチと拍手のなる中をオリヴィエは手を振って消えて行く……。

 

「クラヴィス、ちょっとリュミエールとオスカーを交換せぬか、重いんだが」

「いやだ」とクラヴィスはリュミエールを横抱きにしたまま冷たく言う。

 ジュリアスはオスカーを持ち上げられないので、肩を貸し引きずっている。

「仕方ないねぇ、アタシも肩貸したげるから、ほら」

 オリヴィエはオスカーの肩に手を回しながら言った。

「こんなになるまで飲むなんて、よっぽどさ……、ね、ジュリアス?」と。

 


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