そして、この二人は……。
オスカーとリュミエールは最近一緒にいる事が多い。が、これは本人同士が希望しているわけではない。仕方なくそうなるのだ。今日もわざと用を作りジュリアスの執務室に出向いたオスカーだったが、目当ての主の元には先客があった。リュミエールの方の目当ての主の部屋は空である。仕方なく部屋に戻るか、気分転換にサロンでお茶でも……と思うと、浮かぬ顔をしたお互いに出くわしたのだ。
「なんだリュミエール、元気ないな」
「貴方こそ」とリュミエールは言いながらつい溜息が出る。
「なぁ、お前この間ジュリアス様の執務室から出てくるクラヴィス様を見たと言ってたが……、俺はオリヴィエの館から出てくるジュリアス様を見たぞ」
とオスカーは気になっていた事をリュミエールに話す。ジュリアスがクラヴィス以外の誰の館から出てきてもあまり関係はないとばかりに適当に聞き流しながらリュミエールは自分の言いたい事を言う。
「実はわたくしも気になっていることが……オスカー、ジュリアス様はQUEEN SQUARE GARDEN とロゴの入ったスポーツバッグをお持ちではありませんか?」
「ああ、お持ちだぜ、先日、馬の早駆けに遅刻された時に館までお迎えに行ったんだが、その時お部屋の角に置いてあった。なんでも最近ジョギングをお始めになったとか」
「それと同じスポーツバッグをクラヴィス様も……」
「同じバッグを持っていたからってどうしたと言うんだ、あの二人は聖地で育ちで教育もここで受けてるんだぜ、体育の授業の時に配布されたものかも知れん」
「貴方という人は何でも物事をいい方に考えれるんですね」と溜息をリュミエールはついた。
「やめてくれ、あの二人がお揃いのバッグを持つ相談なんぞしてるとは考えたくないんでね、俺だってお前のようにシクシク泣きたい気分だぜ」
オスカーはリュミエールの溜息にうんざりしたように言い放つ。
「シクシク泣いてなんかいませんっ」リュミエールはオスカーを睨むとスックと立ち上がり部屋から出て行った。
「待てリュミエール、すまん言い過ぎた」とオスカーはリュミエールの後を追う。
「いいですよ、もう」リュミエールはオスカーにそういうと二人はトボトボとお互いの執務室に戻るために並んで歩きだす。
と、向こうからオリヴィエが鼻歌まじりでこちらに歩いて来た。
「あ〜ら、お二人さん、しけた面してどうしたのかな〜?」
すれ違い様、そう言ったオリヴィエにオスカーとリュミエールは無言で睨み付ける。オリヴィエが行ってしまうと二人はパタッと立ち止まり、お互い顔を見合わせて、
「見ましたか?」
「ああ、見た」と確認し合った。(見た)とはオリヴィエが肩に担げていたスポーツバッグの事である。QUEEN SQUARE GARDEN のロゴ入りスポーツバッグ……。
「これで三人ともお揃いです……」
「ああ、俺たちの知らない秘密が何かある……」
「そうわたくしたちの知らないところで何か……」
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