三人が聖地に辿り着いた時は、すでに日は登り、さわやかな朝の光が輝いていた。
「おや? こんな時間に三人揃って珍しいですねー」といきなりルヴァに呼び止められて三人は竦み上がる。
「あ、あらぁ、ルヴァこそ早起きじゃないの〜」
「ええ、あまりお天気がいいので散歩してました、皆さんは? 何です、その鞄は?」
と三人が揃って抱えているスポーツバッグにルヴァは目を止めた。
まさかサクリア仮面の衣装が入っているとは言えない。取り繕うようにジュリアスが言った。
「あ、ああ、これか、ジ、ジョギングでもしようということになってな」
「そ、そうっ、ほらっ、ワタシたち三人って普段あんまりスポーツしないし健康のために」
とオリヴィエも必死に繕う。
「あー、それは良いことですね、私もご一緒しましょうかね、ちょっと待ってて下さい、着替えてきますからね、公園の入り口で待ってて下さいよー」ルヴァは三人に断る隙を与えず館に向かって走り出して行った。
「ちょっとっ、どーすんのよ、徹夜で仕事してまだこの上ジョギングなんて冗談じゃないよ、寝不足が美容に一番悪いんだから、帰って寝るよ、ワタシ」
「この眩しい光の中を走るなどと御免被る」クラヴィスもしかめっ面をしてジュリアスを残して去ろうとする。
「待て、そなたたち、ルヴァはどうするのだ、待てというのに」
「知らないよ、誰も来なければあきらめるでしょ、後で謝ればいいじゃない〜」オリヴィエは振り向きもせずに言う。
「私だって、疲れているのだ、知らぬ、知らぬぞ」
ジュリアスはクラヴィスの後ろ姿に声をかけるが、クラヴィスもまた振り向きもせずに
「そなた今回はあまり働いておらぬ故、ルヴァの相手をしてやるがよい」と言い捨てた。
「キッ」クラヴィスの言葉にジュリアスも怒りながらその場を去った。
いったんは光の館に戻ったものの、ルヴァが公園で待っていると思うとジュリアスは落ち着かない、約束を違える事に高潔な精神が耐えられない。ジュリアスは渋々、ジョギングウェアに着替えると公園に向かって走って行った。公園の入り口でルヴァが寂しそうに膝を抱えて座っているのを見てジュリアスはやはり来て良かったと思いさわやかに笑うと「ルヴァ、行こうか」と声をかけた。
「あー、誰も来ないのかと思って。よかった、ではとりあえず軽く宮殿周り三周しますかね服装はジョギングスーツなんですが、ターバンはしたままなので走りにくいんですよねー、ジュリアス? 膝が上がってませんねー、ほら、もっとこう、手のフリの角度はですねー……」
ジュリアスはルヴァと並んで、聖地を走った。膝がカクカク、心臓はバクバクしていたがなんとか走り終え「心地よいものだった、また走ろう」と微笑み、館に戻るとベッドの上に倒れ込み、爆睡した……のもつかの間……。
オスカーのデカイ声が光の館中に響き渡った。
「ジュリアス様、早駆けの用意のお誘いに参りました。お珍しい、十分の遅刻ですよ〜、先週キャンセルなさり今週こそは、と仰ってたので牝馬のアグネシカではなく四才馬のマチカネハルカとルアンストロングアローを用意しましたっ、鼻息荒いですよ二頭とも〜」
いっそオスカーも仲間に……とおぼろげな意識の中でジュリアスは思うのだった……。
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