◆fortune smiles◆

今日はねー、とっておきのお話をしてあげるよ。
今の女王陛下が、まだ女王候補だった頃の事、彼女はね、とっても頑張ってたんだよー。何にでも一生懸命で前向きでね。
でね、彼女、アンジェリークは……ある守護聖に恋をしちゃったんだ。女王試験も終盤になったある日の曜日の朝早くに彼女はワタシの館に来て、思いつめた顔でさ……。
そう、「オリヴィエ様って素敵、愛してます……」って言わなかったってばさ〜とっても大事な用があるから、特別に綺麗にして欲しいんだって、頼みに来たワケ。

ワタシはすぐにピーンと来たよ。で、相手の好みに合わせてやるからってその守護聖の名前を無理に聞き出したんだよ。相手がランディやゼフェルなら可愛らしく、オスカーならちょっち大人っぽく、リュミエールなら優雅な感じ……ってね、ところが、彼女の相手は、なんとジュリアスって言うじゃないか! ま、なんとなーくわかってはいたけどね。

で、ワタシは、とっても綺麗にしてあげたんだよ。でも衣装はいつものスモルニィの制服のまんま。パックはしてあげたけどメイキャップはしてあげなかった。オリヴィエ印の高級ハチミツリップは塗ってあげたけどさ。ジュリアス相手なら小細工しても仕方ないもんね、あの人、結構、衣装とかには無頓着なトコあるしさ。
「大丈夫、自信を持って行っておいで」って見送ったよ。

でさ、夕方、ワタシがお散歩してたら、遠くからアンジェリークがぶんぶん手を振ってワタシの名前を呼ぶじゃないか。ニコニコしながら彼女はワタシの元に走ってくる。
ああ、上手く行ったんだなーって思ったよ。でも息を切らしながらアンジェリークは「オリヴィエ様、私……フラれちゃいましたーっ。残念! もーこれで女王試験に専念しちゃいますねーっ」ってね、言ったんだよ。
声はとっても元気だったけど、そう言い終わったとたん大きな緑色の瞳からポロポロと涙が落ちててね。

その後、夕暮れの公園のベンチでちょっと慰めてあげたんだけどね。結局、こうなるしかなかったって気もしたよ。
だってね、アンジェリークは女王になる為に選ばれた子だったし、ジュリアスは守護聖の長になるために生まれてきたよーな人だからねぇ。それに二人とも不器用なトコもあったし、なんていってもさー、あの二人ってウブだったし。でもね、ワタシがジュリアスでも同じ答えを出したと思うんだよ。いくらアンジェリークの事好きでもね。アンジェリークの事を本当に思えばね。

そしてアンジェリークは女王になった……知っての通りに。

アンジェリークは、女王就任式典の前にワタシに言ったんだよ、
「あのねオリヴィエ様、あと5年したら私もジュリアス様に似合う大人になってると思うんです。今の17歳の私とジュリアス様だったらダメかも知れないけど22歳の私なら、頑張ればきっとジュリアス様だって……私……5年後に、も一度告白するんだから。あきらめないんだからっ」

「でもさ、その頃になればジュリアスだって30歳! ハゲでお腹がデンと出てたらどーするよ?」
「そしたら、あの時私を振ってソンしたでしょおーって言うの。でもやっぱり大好きって言う」
「勝手にしな〜、さぁっ、式典だよ。アンタの大好きな人がティアラを付けてくれるんだろ? 遅れるとまた叱られるよ〜」

ワタシはそう言って背中を押してあげたんだ。あの時の彼女、とってもいい顔してた。
そりゃもう輝くばかりの笑顔でアンジェリークは壇上に上がってったよ……。

 ☆★☆

あら、やだね〜、なんかシンミリしちゃってるね?
恋より女王を選んだからって、そんなに悲しい失恋のお話じゃないの、これは。オチがあるんだってば。

そそ、結局ね……ジュリアスは自分に正直になっちゃったんだよ。
アンジェリークはもう一度告白したのかって?
ううん、違うの。ジュリアスがさ、我慢できずに
「やはり、私はそなたが好きだーっ」あら、似てないねぇ……って言っちゃったんだよ。

それも聞いてよ、アンジェリークが女王になって、たった半年後にだよ。 どこでどうなってあのジュリアスが女王陛下にそういう事言っちゃったのかは、女王陛下……アンジェリークったらクスクス笑って内緒にしてるから知らないよ。でもホント笑っちゃうよねぇ〜。ジュリアスってば、きっとアンジェリークの笑顔には勝てっこなかったって事だよね。

 ふふふ、ね。ちょっといい話だったでしょ。だからねー、もし好きな人がいたら、それが誰であってもあきらめない方がいいと思うよ。女王候補だからって、恋をあきらめなくちゃならないって事はないんだよ。ほら、勇気だして、行っといで、ね。

−END−


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聖地の森の11月 こもれび