「チャーリー、明日の接待ゴルフの件だが、最終的に午前10時集合と、今、先方からメールが入った」
チャーリーが、再び山のように積まれた書類を処理していると、やや離れたデスクで、自分の仕事をしていたジュリアスがそう言った。「せっかくの休みやのになあ。なるべく早く帰
りますー」
ジュリアスは、まだコースに出られるほどには上達していないので、今回は、別の秘書部の人間がチャーリーに、同行することになっていた。
「かまわぬ。接待とはいえ楽しみにしていたではないか、プレイ後はいつも食事会があると聞いている。その後も酒宴があるだろう。ゆっくりするがいい。私の方もリチャードとクラブがあるので……」
「リチャードとクラブ? なんのです?」
思わず声が低くなるチャーリーである。
「スポーツジムだ。我が社は、実に福利厚生施設が整っている。素晴らしいことだ。私も健康の為、週末くらいは利用しようと思っている。初めてなのでリチャードが同行してくれるというのだ」
「…………そうですか。わかりました。けど、ジム施設なら、俺たちの館の地下にもあるでしょ。なんもわざわざ会社の施設を利用せんでも、専属のトレーナーを雇えばええわけやし。なんなら今からでもすぐ手配を……」
「いや、それには及ばぬ。リチャードは、あれでなかなか体力には自信があるとか。年齢も私と変わらぬから、どちらの身体能力が上か競ってみようということになったのだ」
ジュリアスは、少し楽しそうにそう言った。
“おのれ〜。ザッハのおっさんめ〜、ジュリアス様の負けん気をくすぐるような事を持ちかけくさって〜”
と思いつつも、チャーリーは、ニコッと微笑み、「へぇ、その勝負の結果、楽しみにしてますわー」と、平静を装って言った。
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