ある夜の出来事

 静かな夜だった。

 夜風は暖かで、ヴェールを纏ったように優しく聖地を包み込んでいた。開け放たれた窓からは虫の声や、風に乗ってリュミエールの奏でるハープの音も届く。
 食事の後、ジュリアスはオスカーの館でチェスやダーツをしつつ週末の夜を楽しんでいた。が突然……。

「うっ」 
 とジュリアスは呻き声を上げた。
「どうかされましたか?」 
 オスカーはその声に心配そうに尋ねる。

「いや、何でもな……あ、このような時に……私とした事が……はぁはぁ……来る、来てしまう」
 ジュリアスの呼吸が次第に早くなる。
「えっ、そんな……ジュリアス様はいつも朝一番に出されるのではなかったのですか?」
「ああ、そうだ、コントロールできるようになってからは、そのようにしてきたのだ、朝の清々しい空気の中で、放出するのは何よりの喜びであったから……なのに、こんな時間に……だ、だめだオスカーせっかくだが今宵は失礼する、急いでゆかねば」
 ジュリアスはこみ上げてくるものを押さえきれない様子で立ち上がり、残念そうにしているオスカーをよそにそそくさと炎の館を後にした。
 

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