〜サバイバル キット〜
「申し訳ありませんでした」 ヴィクトールは、ジュリアスとルヴァを前に、深々と頭を下げた。 「もうよい。その程度の傷で済んでよかった。惑星トラジャの民には申し訳のない事をしたが、しようのない事だ。後ほど改めて、部族の長には文をしたためたいが……」 ジュリアスはルヴァの助言を求めるべく、彼を見た。 「持ち帰ったカラーシレンコォーンは研究院で既にエルンストと、ゼフェル様が、解析に当たられています。もしよろしければ私はこれで下がらせて頂いてよろしいですか? オリヴィエ様の様子が気になりますので」 「ああ。私も後ほど、見舞うことにしよう。よろしく伝えて欲しい」 「はい」 ヴィクトールは、そっとオリヴィエに近づいた。 「ヴィクトールぅぅ」 「ジュリアス様に報告は済ませて来ました。お怪我の具合は?」 オリヴィエは眉を顰めながら、少し離れたところでモニターを監視している医療スタッフを指差した。 「はぁ?」 「それは仕方ないでしょう……。惑星トラジャの森にいたんですから、何か未知の細菌がついてるかも知れない。私だって、この部屋に入るのに、頭から、たっぷり殺菌光線を浴びせられましたよ。傷口だってよく洗浄しませんと……」 こういう事に慣れているヴィクトールは、苦笑しながら言った。 「ですから点滴の中に抗生物質が入ってるんですよ。それに、相当、紫外線を浴びられましたからね、ビタミンも取らないとシミに……」 「ちょっとっ、紫外線ってどういう事だよっ」 「エルンストから説明があったと思いますが……。かって惑星トラジャでは、大規模な地核異変と核戦争があったと。その時に、オゾン層がかなりダメージを受け、今でも紫外線の値は、聖地の百倍ほどだと……私でさえ、UVプロテクトクリームを塗りましたよ。まさか……」 「うう……いつものファンデーションだけだった……」 「もういいよ、当分大人しくしてるさ……ところでさ、ひとつ気になる事があるんだ」 「これです」 「どうぞ……と言っても、片手では不自由ですね……私が開けましょう」 「何? あ、チョコレートだ。ひゃぁぁ、このチョコレート、神鳥のレリーフ入りだよ」 「軍の支給品ですから」 「お腹空いてるし、有り難く頂くよ…もぐもぐ……う……でも、マズイね、このチョコ……」
「遭難対策用なので味の方までは。けれど、各種栄養剤入りです。これ一枚でかなりの期間の栄養が補給できます。なにせ十万カロリーもあるんですから……あ、気にせずに、その最後の一口を、飲み込んで下さい。オリヴィエ様はもう少し太られたほうが健康的でいらっしゃいますから……」 お・し・ま・い |