終章


 聖地時間で半年後、執務室のモニター越しに各星々のレポートを、なんとなく眺めていたゼフェルは、ひとつの地方ニュースに目を留めた。

 「最下層部のエリアに、莫大な費用をかけた新空調システムが導入され、有害であった空気が清浄化されたことで、放棄されていた建築物の再開発再利用化が進み……」

 ゼフェルは慌てて、関連記事を抽出する。その都市で、政権交代があったこと、それによって最下位だった都市の治安ランクが、二年の間に三つも上がったこと、新知事は、小さな自治区出身の、裏組織の人間であり、組織の解体を巡っての闘争など、よくない噂は流れているものの、その手腕によって、管轄地区のみならず、近隣地区の経済も活性化の傾向にあること……などが記されていた。

(信じてるから……)
 ゼフェルは、そう言った時の、苦渋に満ちたジュリアスの様子を思い浮かべながら呟いた。

「よっぽどこの方がアンタらしいぜ、そうこなくっちゃな」
 ゼフェルは、静かに立ち上がると、執務室の窓を開け放った。頬にあたる風が心地いい。腕を上に向かって引き上げ、大きく伸びをすると、青く澄んだ聖地の空を見上げた……。
 


END


聖地の森の11月
 あさつゆ

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