翌朝、いつものように飛空都市に鐘が響き渡った。それは同時に新しい女王が決定したことを告げる鐘の音でもあった。アンジェリークは、昨晩の事が夢でないようにと、微睡みの中で祈っていた。新しく始まる宇宙と、愛しい人の眼差しが永遠であるようにと。
クラヴィスもまた、独り夜を明かした執務室の窓を開け放ち、朝靄の向こうから鳴り響く鐘の音に、愛しい人のことを思って、祈りを捧げていた。
優しく聖地を包んでいた靄が次第に晴れ、やがて清々しい青空が拡がる。暖かな日差しはクラヴィスの心の奥に温もりを伝え、その鼓動に命の輝きがある事を教える。
そして、二人の心の中に鐘の音が、いつまでもいつまでも鳴り響いていた。−END−
聖地の森の11月 あさ つゆ